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■民家の再生:蛮風亭■ 山梨県大月市の山郷に建つ古い民家を現地再生した事例。民家を再生する際、耐震強度を確保することは重要な課題ですが、補強のための壁や造作が建物の魅力を損なうものであってはならないと考えています。この民家の場合は補強のために壁を増やして閉鎖的な内部空間を造るより、建物を東西から挟んで支える巨大な「方杖(バットレス)」を組み込み開放性を上げることを提案しました。方杖は基礎(東側は建物の外部)から1階の壁と天井・2階の床・小屋裏を突き抜け、棟木・母屋まで達して建物を固めています。赤ベンガラを塗装することにより、より印象を強め、視覚的にも建物を引き締めています。 |
上:ロフト。赤い丸太の「方杖」と随所に取り入れた竹がこの建物に新しい命と野放図な魅力を吹き込む。 「蛮風亭」は「竹(バンブー)」と方杖補強の大胆さから名付けられた。竹は全て敷地内の竹林から工事中に伐り出したもの。 |
上左:土間の壁から突き出る西側の方杖。壁にはテクスチャーの異なる床板や根太を再利用し、古い壁画のような効果を得て建築主のお気に入りの場所となった。塗り壁部分は南北を藁入り珪藻土、東西を中塗り土とベンガラ入り中塗り土で仕上げ、内部空間に立体感を出した。 上右:2階アトリエ。床から生えて来たような東側の方杖は1階の和室からこの空間を横切って小屋まで届く。突き当たりの壁は赤ベンガラ入りの中塗り土仕上げ。野地板・床は既存のままで、床にはこの後サイザル麻を敷く予定。 |
上:居間から土間と台所を見る。土間中央には古い囲炉裏を復活させた。 |
上左:土間から居間と和室を見る。吹き抜けの中央に浮かんでいるように見えるのはロフトへの通路。 上右:階段と2階の「竹」格子。階段・建具・床板は既存のものを再利用。 |
上:和室(建具を取り払った状態)。左手は床の間。床柱も敷地内の竹林から選んだ。 にじり口のような明り取りの古建具は再利用品。建物の外部からの方杖が壁と天井を突き抜けて2階アトリエへと続く。 |
上:居間から土間を見る。 |
上:2階。ロフトへの通路と「竹」格子。周囲の環境を内部に取り込んだ有機的な空間が楽しい。奥に赤く見えるのは方杖(工事中の脚立ではありません)。 |
上:竹製の手摺り。 |
上:階段付近から吹抜けを見る。 |
上左:竹庇の垂木は浴室天井を兼ねる。 上右:竹が生えたような床柱。 |
上:簡素を極めた突き上げ雨戸。 |
上:高窓に穴を開け、明り取りを兼ねた。 |
上:竹製の絵振板。 |
上:南面外観。傷んだ土壁の代わりに1階外壁を覆う無塗装杉板張りと古材を活かした2階のコントラストが建物を引き締める。建具は全て再利用品。屋根の上の越屋根はトップライトを兼ねる。 |
上:南面外観。 |
上左:南面外観。立地はやや山陰で日照時間が短いため、少しでも多く室内に陽射しを取り込むもうと板庇はルーバー状に間隔を開けた。古材を再利用しているが、この上を歩いて2階の雨戸を開け閉めする程度の強度はある。 上右:西面外観。右上の穴はこの後設置する薪ストーブの煙突用。右下のガラス張り部分は浴室。全面開放することが出来、露天風呂の雰囲気を楽しめる。 |
上:竹を垂木代わりに用いた西面下屋庇を見上げる。軒天の板は傷みの激しいもののみ新材に替えた。 |
上:東面外観。一部に土壁を残し、補修しきれない状態の部分を杉板張りとした。中央の水平の帯は外壁から飛び出る梁の木口を保護するための小庇。下部に見えるのは割り竹で葺いた方杖保護のための屋根。薪置き場を兼ねている。 |
上左:南面外観を西側から見る。 上右:竹製の絵振板。 |
上:左上から時計回りに玄関「家守」・階段上「渦巻」・ロフト「蝙蝠」・和室「古代文字」をモチーフとする当社工房によるオリジナル照明。建物のバナキュラーな雰囲気に合わせて原初的なエネルギーをイメージするデザインとした。 |
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