|
■甲州市立塩山南小学校大規模改修・既存建築物の活かし方■ 教室機能の再構成・給排水設備更新・内外装更新・外部空間の整備 既存建築物の有効利用は人口減社会・財政規模の縮小・地球環境問題といった今日的課題における有効な回答であり、積極的な取り組みが望まれます。以下は昭和46年建築の小学校の改修工事の事例です。 耐震補強・エアコンの設置はすでに行われており、今回は児童数の今後の推移見込みに伴う、教室機能の見直しと、設備機器の更新並びに屋上防水と内外装のやり替えが主な工事内容です。同時に、屋上の手すりや給水タンク、空調用のダクトなど、不要部分を撤去し、壊れた部分を直し、使いにくいところを改めて、明るく使いやすい建築にリフレッシュしました。 色の塗分けや、素材の変更などで構造や形状を変えないまま外観に変化を持たせています。大規模の修繕・模様替えや増築といった建築確認を伴わない工事となり、手続きのための時間や費用も抑えることができました。 外壁面は甲州市の景観条例に適合した3種類の色彩で塗り分けていますが、アクセントとして学校のシンボルカラーである紺色を軒先に使いました。 できる限り木材を使いたいとの要望に応え、内部では共有スペースの床・腰壁を板張りとしたほか、枠廻りや造作に木を使い、新設する家具にも木目を活かした合板を使用しています。外部では防火上支障のない部分に板を張り仕上げています。 |
改修前平面 課題 敷地内動線の整理・ 植栽の整理 外壁再塗装 屋上防水更新 トイレ等水回りの更新 共有スペースの 整備 |
上:外観。敷地内歩車道分離により登下校時の安全性の向上を図る。 |
上:昇降口外観。多くの児童が目にする昇降口は既存のコンクリートの壁の上に板を張って仕上げている。玄関ポーチの床を塗り替え、アルミ建具は取り換えた。 |
上:児童用のゲート。登校した児童はこのゲートをくぐり昇降口に向かう。木部・板材は学校行事の一環として児童が塗装を行った。 |
上:児童による塗装風景。 |
上左:校舎の前庭には自動車と歩行者の動線を分離するため、枕木を敷き詰めたアプローチを設けている。大勢の児童が通る時のため、突き当りの窓を入り口に変更したいとの要望があり検討したが、窓下の腰壁が構造要素であることから断念し、隣の出入口を広くすることで対応した。ウッドデッキに使用した木材はウリン。 上右:雨の日でも濡れずに靴脱ぎできるように昇降口の前には屋根をかけた。柱と壁がなく、通路専用のため延べ床面積に含まれないので、建築確認は受けていない。右手の部屋は以前昇降口として使われていたが、展示・イベント・読書などに利用するための共有スペースとして整備した。 |
上:共有スペースの内側から昇降口前のポーチを見たところ。テラス戸を開けることでウッドデッキと一体となる。 |
上:昇降口内観。天井の仕上げを撤去し、既存の梁・スラブを露出し明るい色で仕上げた。単調さを避けるため、アクセントカラーを控えめに使った。 |
上:図書室。2つ並んだ普通教室間の壁は耐震要素のため撤去不可能だった。そのため外部廊下を室内と一体化させた1室空間とした。受付カウンター・書架・ブラインドは既存を再使用。天井の仕上げ材を取り外し、下地のコンクリートを吹き付け塗装で仕上げ、創建時の床のボールト形状を活かした。 |
上左:既存階段の修復。建物の歴史を語るものとして、機能的に問題がなければ古いものはできるだけ残す。手仕事の跡が残っているところが貴重だ。手摺の木部・金属はともに再塗装し、段板端部の左官仕事のテラゾーは補修して再使用した。 上右:3階廊下。最上階の天井には冷暖房効果を上げるために断熱材を設置した。突き当りの建具は既存の建具を再塗装。扉の向こう側は給食用のダムウェイターのホールがある。右手の教室は学年ごとに一か所ずつ設けた活動室。フルオープンの建具で廊下と一体的に広く使用することができる。 |
上:活動室。建具閉鎖時の状態。 |
上:活動室。建具フルオープンの状態。突き当り黄色い壁の窪みは以前ダクトスペースだったところ。壁を撤去し、床を張り掃除用のシンク置き場として利用する。建物内増床となり利用可能なスパースは増えるが、法律上は増築にならない。 |
上:普通教室北面。左右にあるベージュの扉のみ取り換え、中央部3枚のパネルは建具も含め再使用。掲示クロスのみ張り替え。 |
上:階段室。壁に囲まれ外部からの採光が充分とれない。採光用の窓を開けたいところだが、こちらも耐震要素とのこと。次善の方法として光を拡散させるため、明るい色で仕上げた。 |
上:暖色塗装の階段室に光が拡散する様子。 |
上左:教室背面のロッカー。家具は基本的に木質素材で仕上げているが、背板については壁に使用した掲示クロスと同系色で仕上げている。
上右:同色違い。 |
上左:トイレに至る前室。 上右:トイレ入り口は建具を省略し、枠廻りを色分けして男女ゾーンを区分けした。また、一部に緊急用シャワー室を設けている。 |
・ Page Top ・ |
|